企業の「法務部」に新卒の法学部がいないのはなぜ?

「法学部出身だから、法務部に就職できる!」と勘違いしていませんか?

大学を卒業したら、在学中の経験を生かして、法務部に就職したいです!
って思っていませんか?思っていませんでしたか?

私自身、大学3年生の時はそう思っていました。

「情報系の学生はエンジニアになるんだから、法学系の学生は法務部でしょ!」という発想で、レアな感じがする部署に憧れていたのです。

でも、現実はあまりにも残酷で、法務部に応募した企業は全て不合格でした。

その後、ご縁があり転職した法律事務所で現在に至るまで採用の仕事をしてみて、私はやっと悟るのです。

企業の法務部に、新卒の法学部出身者なんてほとんどいない!

夢を壊すようで恐縮ですが、法学部を卒業した後、新卒で法務部に入社できる人はほとんどいません。

でも法務部に新卒がほとんどいないのは、法務部に良い人が応募してこないとか、法学部の学生の質が悪いとか、そういった応募者側の問題ではありません。

企業の法務部が新卒をほとんど採用しないのは、採用する企業側にとても合理的な理由があるのです。

そこで今回は、企業の法務部になぜ新卒の法学部生がいないのか、その理由を解説します。

なお、今すぐに法務部への就活のテクニックを知りたい方は、こちらの記事を御覧ください。
新卒で法務部に入るための方法とは?

法務部に必要なのは、学部時代に培ったリーガルマインドではない。

「学生時代の法律知識が、御社の役に立ちます!」
「リーガルマインドが培われているので、即戦力を目指せます!」

法学部生が法務部に就職したい時、学生時代の法律勉強経験をよくアピールしていますし、実際に私も就職面接で言っていました。

でも、ある日の面接で、法務部の部長さんからこう言われました。

「法律知識なんて、弁護士に金払ってるからいらないよ」

もう、言い返せないですよね。
私自身、とっても納得してしまいました。

結局、法務部に合格するためのアピール方法がいまいちわからないまま、私は法務部への就職を諦め、営業として就職しました。

法務部の仕事、理解していますか?

法務部への就職を諦め、IT企業に営業として就職した私は、現場で「法務部」の方と仕事をします。

一緒に仕事をしてみると、学生の頃に思っていたイメージとは全く異なる、「法務部の難しさ」が見えてきました。

法務部の仕事は、社内とのケンカ?

営業として働いていてわかったのが、契約は理論だけではどうしようもないということ。

例えば、社内では「うちの利益が原価の何%以上ない契約は、赤字になる恐れがあるからできない」というルールがある場合でも、お客様に商品を売る際には、営業からすると社内のルールなんてどうでも良いんです。

一旦安く売っても、今後の付き合いができることを優先したい!
他社と比較されているので、1円でも安く売りたい!

そう、細かな社内ルールを無視してでも、売りたい場面があるのです。

会社としては、もちろん役員も昔は営業だった人もいるわけですから、現場の事情も分かる。

でも、売った結果が赤字になると会社が立ち行かない訳ですから、あまりに安い値段で好き勝手に売られても困る。

つまり、理想の売って良い価格と、利益が出る最低限の売って良い価格には幅がもたせてあり、大体の場合は「理想の価格以下で売りたい時には経理・法務に相談」という例外が作ってあります。

もうお分かりですよね?

1円でも安く売りたい営業VS適正な契約で適切な価格で売って欲しい法務の、戦いの火蓋が切って落とされる訳です。

会社の利益と、法令遵守の狭間で揺れる法務部員

「製品の保証期間があまりに長すぎる。」
「契約内容がこちらに不利すぎる。」
「こんな抜け漏れだらけの契約書フォーマット、リスクが高すぎて認めるわけにいなかい。」

法務部がそう言えば

「他社との差別化だ!」
「過去5年はその内容で契約してるんだから、今さら変えられない!」
「お客様のフォーマットを使わないと、契約できない暗黙のルールになってるんだ!」

と営業が反論。

そのような意見の応酬のなかで、法務部は「ここだけは譲れない」部分をしっかり営業に納得させて、ルールを度外視した契約を取ってこないように指導する必要があるのです。

また、法務部員はお客さんの意見を直接聞くことができず、営業が間に入った伝言ゲームになるため、まずは社内の営業を説得しながら、その先にいるお客様を説得する。

さらに、営業とあまりに喧嘩してしまうと、言うことを聞かずに暴走して契約してしまうかもしれないので、口では議論していても、円滑な関係を保たなければ、今後も含めた法務部の立場が微妙になる恐れがある。

そんな色々な環境の狭間で、法務部は踏ん張っている仕事なのです。

法律の細かい知識より大事な「現場の温度感」

そのように、法務部は業務と法令の間でバランスを取る仕事のため、まずは自分の会社の業務内容について知らなければ、仕事になりません。

営業の現場の「ここだけは譲れない」ラインや、そもそも自分の会社が扱っている商品、お客様の会社や業界の特長がわからなければ、社内で営業を説得する以前に何が問題かを理解すらできないのです。

法律の知識は勉強すればつきますし、本で調べたり、誰かに質問すれば分かるので、正直重要ではありません。

法律知識に対して、現場の温度感や妥協ラインなどは、現場で働いている人間にしか分からないので、現場の感覚こそが一番重要なのです。

なぜ企業の法務部は新卒がいらないのか?

法務部って大変だなーとしか思わなかった会社員時代でしたが、転職して法律事務所で採用をしていると、同じような「人材」の奪い合いが発生します。

その人材の奪い合いの中で、私からは法務部の仕事のリアルと、企業の法務部が新卒を採用しない理由が見えてきました。

新卒には、現場感がないから

一番は、「現場感」のなさ、これ尽きるでしょう。

自社のサービスを理解し、利益の出る範囲や数字を理解し、その上で妥協ラインを探るのが法務部のお仕事です。

そのようなバランス取りのプロ集団に中に法律を少しかじった程度の22歳が来ても、活躍どころか力になれる場面すらないというのがリアルなようです。

また最近はインハウスローヤーであったり、ロースクールの卒業生であったり、より法律知識のある若者がたくさん就活市場にいます。

どうせ現場感のない社会人初心者を採用するなら、より法律知識のある人を取りたいという事情もあり、さらに新卒は不利な状況になっているようです。

新卒には、最初に現場に出てほしいから

自社のことを何も知らない新卒には、法務より先に現場感を養ってもらうため、数年は営業職等他部署での経験をしてから、法務部に配属するパターンも多いようです。

「新卒」はゴールデンチケットであり、どんな部署に配属されても、どんな失敗をしても、周囲は温かく迎えてくれることが多いです。

そういった歓迎される環境で、現場を体験して・質問した経験は、やはり研修や読書では補えない、貴重な経験です。

他の部署としても、法務部で数年働いた人よりも新卒の新人の方が、迎えやすく、教育しやすいという側面もあります。

また、配属された部署で知り合いを増やしておくことにより、現場が「俺が育てたあいつの助言だから聞いてやるか」とうスタンスになり、将来的に法務部と現場との架け橋になる期待もあります。

知らない法務部の人の意見より、前に自分が可愛がっていた後輩の意見の方が、聞いてやろうか!という気持ちになりますもんね。

新卒は、教育コストが高いから

こちらも、真実です。

なぜなら、法務部は直接的にお金を稼げる部門ではありません。

そのため、利益を生む営業やものづくりのできる技術などの他の仕事に比べて予算に制約があり、教育にかけられるコストが限られるのです。

それ加え、新卒は普通の業務知識を教えるだけでなく、ビジネスマナーやマインドから教育していく必要があるのでとても教育コストがかかる。

そうなると、別部署で育った人材を引き抜いてきたり、転職者を採用する方が楽なので、教育コストが高い新卒者は、敬遠されやすいのです。

転職者で間に合っているから

最近、法務部への転職が人気というのも、一つ原因としてあります。

ブラック企業が増え、また法律系の資格を持っていても稼ぎが十分でない人も増え、法務部への転職を希望する人は年々増えています。

知識と経験があり、法律にも詳しい転職者に比べると、新卒は身に付けてきた現場感で勝負するしかなくなり、やはり他の部署での経験が優先されることになります。

まとめ

つまり法務部は社内との調整が一番大切な業務になるため、新卒は

①現場経験がなく
②教育コストが高く
③転職者の方が使い勝手が良い

という理由で、なかなか選ばれないのです。

法務部も法律事務所と同様、一度入れば転職は簡単ですが、その「一度入る」ということがとても難しい分野ということですね。

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その他詳しいテクニック等については以下の記事で詳細に解説しているので、是非参考にしてみてください。
新卒で法務部に入るための方法とは?

また、新卒で法務部に入れなかった管理人が、転職を繰り返して法務部にたどり着くまでの過程も記事にしてあるので、既卒の方はそちらも参考にしていただけると幸いです。
営業から法務にキャリアチェンジを成功させた転職方法(概要編)
営業から法務にキャリアチェンジを成功させた転職方法(進め方編)
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

それでは、いつか皆さんと法務の現場でお会いできることを夢見て、今回はここでさようなら。